作品解説
浜口はさくらんぼをモチーフとする理由に、その特有の赤色による「シュパンヌング」を挙げています。シュパンヌングとはバウハウスにおいてカンディンスキーが講じた造形理論で、画面にポイントをつけ、視線を集中させることをいいます。深い黒や青と対比されてより鮮烈に煌めくさくらんぼは、どこか艶かしさも感じられ、見る人を惹きつけてやみません。
浜口 陽三(はまぐち ようぞう)
明治42年(1909)和歌山~ 平成12(2000) 版画家。東京美術学校彫塑科に入学。梅原龍三郎の助言により、中退し渡仏。第二次大戦により帰国し、戦後本格的に銅版画制作を開始する。昭和28年に再び渡仏し、カラーメゾチントという銅版画技法を独自の解釈から開拓した。繊細で静謐な作風でぶどう、さくらんぼなどの静物を得意とした。サンパウロ・ビエンナーレ版画国際部門での最優秀賞受賞をはじめ、国内外で多数受賞。勲三等旭日中綬章受章。