2005-09-20日本美術そうだったのか通信
Vol.62 酒井三良とミソ

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.62
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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お休みは楽しく過ごされましたか?そろそろ「芸術の秋」。美術館や、画廊
にも是非いらして下さいね。

アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

私はといえば、昨日は弥生美術館・竹久夢二美術館に行って参りました。そろ
そろ涼しくなってきますので、根津・上野の歴史をめぐる下町散歩なんて、結
構素敵ですよ。和服でも着て、どうでしょう。ついでに寄った旧岩崎邸では、
老若のカップルが多いのが印象的でした。

詳しくは「秋華洞・丁稚ログ」でどうぞ。
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500ojh00f8tz825x8r

ところで、政治向きの話にトビますが、民主党の党首は前原さんに決まりまし
た。べつに私はどの党の支持者でもありませんが、民主党が強くならないと日
本の政治は良くならない、と思っていますので、若い彼がなったことに、私は
ホッといたしました。

若いと色々と迫力が出ない、つぶしが利かない、という面もあるでしょうが、
ほぼ同世代の私としては、応援したい、気持ちです。どんな人なのか、今の時
点ではわからないので、しばらく様子を見てみたいと思います。いち国民とし
ては。

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今週の新入荷
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■酒井三良『磯釣』(さかいさんりょう・いそづり)
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500okh00f8tz825x8r

この絵、味があります。

色はわずか。描きこみは省略のきわみ。

画面の大半は、海。
そして磯に立ち、釣り糸をたれる人。

「海」は、波は三角印が連なるのみ。主人公の釣り人は、マジックで書いた漫
画のようです。

書き込みの多い絵が好きな人から見れば、なんだこれ、という作品かもしれま
せん。

三良は福島県出身。大正8年の第二回国画創作協会展(国画創作協会は村上
華岳、土田麦僊が文展に反旗を翻して興した会です)で、下記の作品「雪に
埋もれつつ」で、華々しくデビューします。

http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500olh00f8tz825x8r

どうです?滅茶苦茶いいでしょう?福島に行ってご覧下さいね。

その後、茨城の「河童の芋銭」こと小川芋銭に出会い、横山大観らの「院展」
に発表、以後、芋銭に私淑します。

小杉放菴が芋銭を賞揚し、その芋銭が三良が私淑する、という、叙情系文人画
の人たちの「尊敬」ある関係のなかで、芸術が育まれていく、というとても
幸福な状況があったわけです。

三良の初期の絵は先ほど紹介したような、物語性と情感に富んだ濃厚なもので
したが、おそらくは芋銭の影響を強く受けて、次第に「枯れた」画風になって
いきます。

初期の絵は、上記の作品でもわかるように、非常に濃厚な色使いで、地方の暮
らしぶりを物語性たっぷりに描きます。

けれども、本作は反対に、引き算で描いた文人画的世界です。「磯釣り」とい
う、俗世からちょっぴり隠遁した楽しみの世界を、いかに単純な要素で書くか。
これが、もし濃厚にべったりした筆致で描かれていたら、「気分」は伝わりま
せんね。

こんなんちょこっとかけてたら、イキですねえ。

酒井三良『磯釣』
紙本着色軸装
本紙25×40.3 cm 総丈118.5×53 cm
落款・印・共箱
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500omh00f8tz825x8r

作品は一点限りです。お問い合わせ・ご用命はお早めにお願い致します。品
切れの際はご容赦下さいませ。

作品は、東京・銀座六丁目、数寄屋橋を貫く電通通り沿いの、弊社アートオフィ
スJC画廊で御覧になれます。また、スタッフ出張により御覧いただくことも
出来ますのでご遠慮なくお申し付け下さい。

<弊社開廊時間>
平日、土曜 10:00-18:00
日曜休廊
※平日にお越しの方には、当店自慢の美人社員(当社比)がお茶をお入れしま
す!
弊社へのアクセス
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500onh00f8tz825x8r

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でぇはでは、今週は九州女、弊社の看板ムスメ?
イヤマのコラムです。

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イヤマの☆★☆今週のステキさん★☆★
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さて。今週のステキさんは。

……

………

あ。スミマセン。ムダに勿体つけてしまいました。

では、気を取り直して。

今回は…(ダラララララララ… ←ドラムロール風)、
弊社代表にして、当メルマガ執筆者田中千秋さんにご登場いただきまーす☆

え?

「なーんだ」デスカ? いえ、そうおっしゃらず…。

ほんとうは、ちょっとだけ、知りたくないですか?
ね?知りたいでしょう?田中千秋の実態、実の姿、本性を。

(そうだと言って!)

ええ。ここでたっぷり生の田中千秋を暴露…もとい、ご紹介いたしますので、
ご用とお急ぎでない方は、どうぞしばしお付き合いいただきたく存じます。
(ご用とお急ぎの方も、どうぞ後ほどゆっくりと)

★☆★

わたしが田中千秋(以下、普段通り「社長」と呼ばせてくださいね)と
一緒に働くようになって、はや半年が過ぎました。一見のんびり、いや、
ぼんやり?のほほん?(あ、怒られる…)に見える社長ですが、その真価
真髄、極めて優れたリーダー性に気づいたのは、実はごく最近のことかも
しれません。

ここぞ!と思って入社した会社ではありましたが、ちっちゃな所帯(社内)で
隣同士、長い時でほぼ半日×週5日一緒に過ごせば、それなりにストレスも
溜まるってもの。経営者と従業員。もちろん、上司として尊敬し、学ぶ面も
多いと分かっていても、です。しかも、年齢差はたった4つ。こちとらチャキ
チャキの元・博多っ子。日を追うごとに、仕事の遣り方や進め方の違い等々に
端を発し、ちょっとしたことで口論、言い合いに発展するようになりました。
それも、しばしば。

当然、入社直後は結構悩みましたね…。いやいや、それは社長も同じ、いや、
それ以上だったかもしれません。「なんでこんなの入れちゃったんだろう…」って
(苦笑)。

でも。

社長のスゴイところ、ステキなところはここからです。
どんな言い争いも反論も、いっさい後に持ち越しません。
忘れっぽい?うーん、確かにそれもあるかも(笑)
ですが、本当のところ、口論の結果や本質だけを重視されるので、
「あいつがオレに逆らった」なんて、下らない悔恨を一切残さないのです。

いやいや、これはなかなか出来ることじゃないと思いますよ。
最初は驚きましたもん。だって、世の上司、しかも経営者の中には、
ちょっとしたことでヘソを曲げる人、多いでしょ?もちろん、上司や相手の
立場を尊重するのは大切なマナーですが、表面的な迎合に囚われて、
本当の意味での尊敬を得られない上司もいる中で、40歳にしてこの度量。
人間として、とても尊敬する部分のひとつです。

ご存知の方も多いと思いますが、当社の目利きはこの道約50年の田中自知郎
(千秋の父で現在会長職)が大半を担っていますが、とは言っても、実質的な
運営、日々の業務の指揮陣営はほとんどが社長の千秋によるものです。本人
曰く「会社経営はとても楽しい」そうですが、その仕事量たるや、ハンパじゃ
ありません。おまけに元SEで、PC方面にめちゃくちゃ強い。困っている人が
いるとほっとけない性格とも相まって、社内のOA環境の整備までやってしまう
面倒みのよさ。

で、多忙さに拍車がかかる結果に。

なのに、時間が足りなくて焦っていることはあっても、忙しくてイライラして
いる姿は一度も見たこともありません。

おべっか・おべんちゃら不要、仕事や会社をよくしていくための提案や議論なら、
どんな些細なことでも真摯に耳を傾けてくれ、公明正大、ユーモアがあって、誰に
対しても礼儀正しいのに、権威主義や迎合が苦手で。それが、ある意味権力の象徴
とも言える、東大の出身なのだから、これまたおもしろいのです。

不正も嫌いみたいですね。筋が通らないこと、曲がったこと。
その代わり、自分の過ちは即座に謝罪し、訂正します。
こういう、人としてのまっすぐさに触れるたび、この会社に入って
よかったと、つくづく思うわたしです。

慣れるまでは、それなりに大変な面もありましたし、
あまりに自然に色々なことをこなしちゃうし、自らアピールなんかもしないので、
最初はなかなか良さが分からない部分もありましたけどね。

今は本当に、いい社長、いい会社だと思います。

だからこそ、この会社をもっと盛り立てていきたい、と。

従業員に自らそう思わせる指導力、リーダーとしての資質もさすがだなぁ、と
入社8ヶ月目の今、心の底からそう思うわけでございます。

★☆★

いかがでしたか?田中千秋の素の姿、素顔。なかなかのステキさんだったのでは
ないでしょうか。

当社の業務が拡大するに従い、先週から、社長の妹さんや奥さんがお手伝いにきて
くれているのですが、やはりというか、身内への甘さは一切なし。これもステキですね。
ここで身びいきなんかしたら、ちょっとイヤミのひとつでも言ってやろうとしたの
ですが、その目論見は見事に外れました。でも、そうですねぇ、ちょっと…、いや、
かなり見直したんですよ、実は。

こんな社長とイヤマ、ほか5名、計7名で運営する、アートオフィスJC・秋華洞です。
皆様、今後共どうぞ末永くご贔屓に願います!どうもありがとうございました。

・今週のステキ度…☆☆☆☆☆+おまけ☆(笑)

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えーーーーー。
超手前味噌の今回のオハナシに、鼻白んだ方もいるでしょうけれど、お許しく
ださいませ….。

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緊急募集

スタッフを新たに募集いたします。一名。
仕事内容は、作品の整理、撮影、ウェブへの登録、画廊での接客など。
文章力に自信がある方、ウェブや画像の処理が得意な方、歓迎します。
多少の力仕事もやってもらいます。

美術・絵画と、インターネットの世界に関心が深い人が向いているでしょう。
「売る」仕事ですので、人の心のわかる、性格の明るい方が望ましい。

弊社は成長途上の会社です。本当に思い切りやりたいあなたを求めています。

勤務は火曜から土曜の9:30-18:00。(日月・祝日休みの予定)。
時間給でのアルバイトの場合、1000円から。
正社員の場合、月18万円から。経験などを考慮して報酬は決定します。
勤務は11月からの予定。

残業は、仕事に応じてあります。
ただしサービス残業および残業の強要は、ありません。

お電話の上、まずは弊社まで履歴書(写真添付)を送ってください。
年齢・男女は問いません。

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆
おまけコラム 『菜の花の沖』と、『ヒルズではたらく社員の告白』

今ですね、司馬遼太郎の『菜の花の沖』を読んでいます。

こんな面白い話、早く読めば良かった。

江戸時代中期、海運業で成功した高田屋嘉平の物語なのですが、主人公が地味
そうなので、実は文庫本で購入したまま一年以上ほっぽってありました。

でもねー、もう、第一巻から読ませますねえ。(全6巻)

嘉平は、親戚の家で幼いころから丁稚をやるわけなのですが、隣村出身という
ことで、「よそモノ」扱い、もう同世代に徹底的に苛められるのです。

あろうことか、盗人の濡れ衣まで着せられて、一か八か、村一番の器量よしの
ムスメを奪って生まれ育った淡路島を逃げるのですけれども、このムスメとの
電撃的な心の通い合いが、あーたまらん、もう孤独とエロスと純情の掛け算で、
背骨がふるえる感動であります。

兵庫へ逃れた嘉平は、船乗りとなり、極貧の出にもかかわらず、気がつけば豪
商への道を歩むのですが、商人というものの置かれた立場と夢、というものが
これまた共感するのです。

海の男、海運業は、すごく誇り高い職だけど、本人は、農村からはじきだされ
た、という思いがあるわけです。しかし、生死をかけた船乗りとしての矜持も
強い。

一方で、前人未到の北海道との大取引への夢。そして苛められた経験からくる、
「差別」する側への反発と信念。

海運業で世界を股にかける夢を持った「坂本竜馬」もそうですが、「商業」と
いうものが持つロマンを、ぶっとく描くことに、なぜ司馬遼太郎は情熱を燃や
していたのだろう、と思います。

『ヒルズではたらく社員の告白』という本は、今本屋で平積みになっています。
私、正直申しまして、GとかYとかLとかの頭文字のネット大企業の一部のスタッ
フの方の対応には(もちろんちゃんとした人もいますが)しばしば疑問を感じ
ていましたので、この本を読んでわが意を得たりと感じました。

商業というものは「儲ける」ためにあるのですが、「何のために」「誰が」儲
けるのか、ということが多少ずれていても、時流に乗れば、「儲かってしまう」
ことの副作用がここに読み取れるように思いました。

要は、人が育っていない。

育っていなくても、お金が入る。

と、それで、よしとなってしまう。

人間の成長と、会社の成長が、パラレルといいますか、イコールであるような
ありよう、SONYの創業のモットーが「自由闊達ニシテ 愉快ナル理想工場
ノ建設」であったような、志がなくっちゃあ、起業する意味なんてないんじゃ
ないの、と思うのです。

「菜の花の沖」を読み進んで思う、爽快感。の、ようなものを仕事にも感じた
いものですね。

参考リンク:アマゾンの『菜の花の沖』
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500ooh00f8tz825x8r
セブンアンドワイ『ヒルズではたらく社員の告白』
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500oph00f8tz825x8r
秋華洞丁稚ログ「ヒルズではたらく・・・」
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/500oqh00f8tz825x8r

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近代絵画・現代絵画を軸とし、さらに、鎌倉・室町時代より、現代に至る
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