2005-04-09日本美術そうだったのか通信
Vol.43 美術商という業界+箱は大事。

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.43
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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おはようございます。
みなさん、お元気ですか。

ニューヨーク行きが急遽決まったのに、さして準備も進んで居らず、ソワ、
ソワとしています。

アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

今回はですね、この美術商の業界、という事に関してちょっと触れたいと思
います。

前にも、どこかで書きましたが、私は、この業界のムードといいますか、人
たちのことが気に入っております。

何事も、新しく触れたときには、惚れて、しばらくすると、倦怠に陥り、や
がては欠点が目に付く、という事が何事に関してもあるでしょうから、今は
そう思っているだけかもしれませんが。(まるで夫婦のように・・・否、ウ
チだけは別ですが・・・)

単純に言って、おつきあいさせていただいている美術商の社長さん、番頭さ
んたちは、明るいです。当然、みなさん、したたかな一面は持ち合わせてい
ますが、商人特有のスカッとしたところがあります。ま、明るい楽しい人と
自然お近づきすることになるので、そう思っているのだとは思いますけれど
も。

そして、本当に、美術品について、掛け軸にせよ、焼き物にせよ、その他の
古道具にせよ、深い造詣をお持ちの方が何人もいらして、しかも、そうした
知識を、まったくペダンティック(エラソーにひけらかす)ではなくて、商
売道具の「一部」として、さらりと披瀝されるところがカッコイイと思いま
す。

ただ、逆に言えば、そうした総合的に優秀で素敵な美術商は日本でそうたく
さんはいないのかもしれません。(私どもの参加している市場には集中的に集
まっているだけで。)

だから、皆さんの立場から考えると、いちから街で総合的な意味で、良い美
術商を探す、ということは、大変なことかもしれませんね…。

ところで、NHKに勤めている友人が、数年前に、何かの贋作事件で、美術
商に何人か取材したそうですが、そのときの印象は「胡散臭いタヌキオヤジ」
ばっかりだった、そうです。

取材した先の商人がタヌキ美術商だったのか、同じ人を見ても私が誇り高き
「オオカミ」に見えるところを、彼にはタヌキと見えたのか、あるいは、彼
の取材態度の陰険さ(ゴメンネ)に、美術商がタヌキの顔を見せたのかはわ
かりません。

商売人である限り、あるいは「タヌキ」に見える場面もあるかもしれません
が、真面目にいい物を適正な価格で扱っている美術商、そして明るくて、一
緒にいると楽しくなる、人柄も素敵な商人もいる、ことは知っておいて頂き
たいな、と思っています。

え、紹介してくれ、って?

まず、は、ウチのお客様になってくださーい。

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今週の新入荷情報
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■川合玉堂『渓間の花』(かわいぎょくどう・けいかんのはな)
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40263oy0c8nyou4eco

おんらいんぎゃらりい秋華洞では、毎度おなじみの、川合玉堂先生の作品で
す。

紙本(しほん・絹ではなくて、紙に書いてあること)の小品ですが、玉堂なら
ではの品の良さの出た作品です。渓流に枝を下げた桜の姿(散り気味?)が描
かれていますが、フレーム上から入る桜、フレーム右上から左下に流れゆく川
の流れから、小さな画面の「外」の拡がりを感じさせます。

水ぬるむ奥多摩の渓流にさしかける桜。桜の季節は、暖かいながらも、夕刻に
冷気を感じたりもするものですが、私は、水音と共に春の爽やかな冷気をも感
じられるように思います。

部屋にさりげなく飾る、もうひとつの春。

☆作品は弊社画廊で御覧になれます。作品はそのもの一点限りですので、購入
をご希望される方はお早めにご連絡下さい。

★昨日も売れたばかりの岡信孝先生の作品にお問い合わせがありました。

実は「売約済」になってからスグのお問い合わせがしばしばありまして、私
どもとしても非常に残念です。絵は同業の方にお売りしてしまう場合もござ
いますので、いつまでも在庫しているとは限りません。

美術品というものは、本当にその一点限りのものですので、一期一会、お気に
とまったら、まずはお問い合わせして頂く事をお勧め致します。

<弊社開廊時間>
平日 10:00-18:00
土曜 10:00-18:00
(ただし土曜日は都合により閉める場合がありますので、事前にご連絡を。)

TEL 03-3569-3620 or 03-3569-3990
東京都中央区銀座6-4-8 曽根ビル7F

弊社案内図
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40264oy0c8nyou4eco

※平日にお越しの方には、当店自慢の美人秘書がお茶をお入れします!

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土曜スタッフ募集

土曜日のみの事務をしてみませんか。
土日お休みのOLの方などで、きちんと責任を持って勤めて頂ける方を、募
集致します。ワード、エクセル、HTMLの知識必須。オンラインショップ
と美術商の世界に興味がある方。ただし本気でやる気のある方のみ。
担当:田中千秋 03-3569-3620 info@aojc.co.jp
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さて、今週の特集です。
美術品の価格のお話、今回は「箱」です。

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「絵画・美術品の価格はどのように決まるのか」その4
–箱–
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さて、前回までは、絵画の大きさと、価格の関係について述べてきました。
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40265oy0c8nyou4eco

かいつまんでいえば、大きい方がフツウ高いことは高いけど、面積あたり幾
ら、と単純にいえるものでもない、ということでした。

大きさと価格の関係については、バッチリ統計を取って、対数グラフ(高校
でやったlog X などのアレです。多分忘れた方が多いでしょうけれども。)
でもグラフを作れば面白いと思うけれども、面白いと思うのは多分僕だけでしょ
うから、そういうハナシはこれで終わり。

「絵画・美術品の価格はどのように決まるのか」その1で、

絵の値段は、<感動>の市場性で決まる。

が、キーワードになる、と申しましたが、感動、以前に、実は、真贋、の問
題があることはまだ申しておりませんでした。

真贋のテーマについては、これまでも多く触れてきましたし、これからも触
れていくと思いますが、今回の「箱」のテーマはこの「真贋」問題にも深く
関わってきます。

<感動>以前の「形式」「体裁」として重要な、箱の問題について、考えてみ
たいと思います。

「箱」。

日本美術コレクター以外の方にとって、ハコ、は、どうでもいい事のように
思われるかもしれませんが、これは存外、大事なものです。

掛け軸、および、茶道具、工芸品、にとって、箱はとても大事です。

なかでも、立体物—茶道具、工芸品の場合など、箱がなければ誰の作品か全
く分からなくなってしまうケースがあります。箱無しの名作茶碗があっても、
誰のモノかわかりませんので、市場では、なんだかわからない、綺麗な茶碗、
で終わってしまいます。

箱有り、なら30万したのに、箱無し、で二万円、ということもありうると思
います。

つまり、箱は、たんなるケースではなくて、「名札」の役割を果たしていま
す。さらに箱に流麗な陶芸家の直筆で落款・印が押され、さりげなく精緻な
細工の「いい調子」の箱に収められていることで、作品の「鑑定証」的な役
割を果たすと当時に、「作品」の一部にさえなっているのです。

掛け軸の場合は、普通(例外もあり)、画中に落款または印がありますので、
箱なし=作者不明、ということはありませんが、やはり大事な要素といえます。

さて、掛軸の箱については、江戸期以前と明治期以後に分けて考えなければな
りません。

まず、江戸期以前。

何故なのか突き詰めると分かりませんが、江戸期以前の作家の作品については、
「共箱」と言って、作者本人が箱に落款(署名)・印を押す、画題を書く、
という習慣がなかったようです。

江戸期のビッグな画家、書家、高僧などで、現在評価の高い方、あげればき
りがないですが、たとえば、円山応挙、伊藤若沖、一休、良寛、仙崖、など
の名前を挙げたとしても、「この箱ならバッチリ!」という決まった形式が
ないのがフツウだと思います。

ただ、作家ごとに、「まあこの人が箱書き書いているのならいいだろう」と
いう方がおります。そうした事情は複雑怪奇かつ私の勉強不足で、到底ここ
では表現し切れません。しかし例えば良寛さんの書なら、相馬御風さんとか、
安田靫彦さんとか、何人かの信用ある研究者あるいは数寄者の箱書きがあれ
ばあるほど信用性は増すとはいえましょう。

が、滅茶苦茶おおざっぱに申しますと、やはり「箱の気品」というものが大
事ではないかと思います。

つまり、その作品が良いものとして、いい家で大事にされてきた、という気
品・風格が伝わってきた歴史を感じさせるものであることです。

付け焼き刃っぽいものはダメです。

昨年だったか某庁舎さんに呼ばれて差し押さえ品の「無料査定」をさせて頂
いたことがあるのですが、(多分どこかに書きましたが)、そのときに面白
かったのは、その中に「国宝」があったことです。

職員の方は、10名近いスタッフです。緊張感ではりつめた倉庫内の作業場。

ずらりと古そうな掛軸が並びます。

白い手袋を嵌めた数名のスタッフが、うやうやしく一番目の箱を取り出します。
皆の視線が作品に集中します。ゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえてきそうで
す。

そこに書いてあるのは・・・「国宝(級)」。

1.国宝には「国宝」とは書きません。
2.「国宝級」と書いてある=品がない=品のない所有者=ダメなもの

と、決めつけるのはよくありません。万一、良い作品を闇に葬る事があって
はいけませんので、決めつけはしませんが、この箱を見て「買いたい」と思
う業者はまれでありましょう。

「あ、これはハナシになりません。マックロクロの偽物です。」父の一言で、
一同の緊張感がほどけました。

用意された作品のいずれもが五十歩百歩であることが明らかになるにつれて、
しだいに皆がカラカラと笑い出し、ホッとした空気が流れたことは印象に残っ
ております。

また、一見して騙されやすいものに、「漆」に「金字」のものがあります。
こういう箱を見た場合は、注意が必要です。

黒光りする立派な箱に、うやうやしく金色の字でたとえば「御物云々(要す
るに権威)」的な事が書かれています。二重箱、三重箱、紐も使われていて
いかにも立派。

こうしたものに、いいものもあるのかもしれませんが、私の短い美術商経験
の中では、いいものはあまりなかったように思います。

日本美術の美的感覚のハートは「粋(いき)」や「わびさび」という事であっ
て、それは多くの場合「シンプル」で、しかも技巧がこらされている、とい
う事にあると思います。

大層な「事大主義」「権威主義」は、そういうハートとは別の所にありましょ
う。

とはいえ、何事にも例外はありますので、この話、鵜呑みにしないで下さい
ね。「箱」だけで全てが決まるわけではありません。箱なしや、箱書きがない
場合でも、さほど影響を受けない性質の作品もありうると思います。(なにか、
アイマイですが、実際そうだと思います。)

明治期以降、すなわち「近代」掛け軸の箱事情については、次回以降に譲り
たいと思います。

ではではまた来週!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

いよいよ来週、ニューヨークに行くことになりました。結構突然決めたのは、
勉強する機会を目先の忙しさで逃してはいけないと思ったからです。

一週間の滞在中、下着の洗濯はどうするか?
英語は勉強する間がないが、通じるか?
チップってどう渡すのだ?

今回は全くの一人旅なので、不安でございます。

そんなことよりも、行くことで、将来に繋がる発見をできるかどうか、とい
うことが勿論大事なのです。

目指せ、NY支店!

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まで、あらゆる分野で活躍した画家・高僧・武将・文人・歌人・俳人の手に
よる絵画・書蹟、時代屏風、絵巻、古文書、古写本、古版本、稀覯本(きこ
うぼん)を専門とし、その他、彫刻、工芸品、茶道具など、多岐にわたって
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弊社は平成15年に設立、平成16年に開店致しましたが、50年近く美術業界
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