□■□■ 「日本美術そうだったのか通信」 Vol.38
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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寒いですね。。。
アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。
東京では、雪が昨夜からの雪が積もっています。今も降り続いています。さら
に降るのでしょうか。
個人的なハナシで恐縮ですが、実は私のオヤジ殿(弊社会長)が、今日明日、
千代田区から世田谷に引っ越すのですが、母はなにやら体調悪く、雪のそぼ降
る中を作業するのは、引っ越し屋さんの「おまかせパック」を頼んだとはいえ、
心配でございます。
今年はなかなか寒くならなかったので、温暖化のからみで気持ち悪く思い
ましたが、寒くなったらなったで、インフルエンザは猛威をふるうし、雪は
ふるわで、思い通りにはいかないものでございます。
3月の雪って積もるんですよね。。。
★★★★☆☆☆☆
ブログにも書きましたが、宮尾登美子『序の舞』を読みました。
セブンアンドワイさんの「序の舞」のページ
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rufby0b8fv4nhw59
秋華洞・丁稚ログの該当ページ
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rugby0b8fv4nhw59
上村松園の生涯に材をとった作品ですが、ここまで赤裸々に書いてよいのか、
という位に、ひとりの女流画家の悦びと奈落、屈辱と栄光を克明に描写して
います。
明らかに松園やその恋人本人にしか知り得ないエピソードがふんだんに盛り
込まれているので、かなり作者のフィクションに基づく「物語」であろうこ
とは容易に想像され、息子の上村松篁さんあたりが怒った、というのもむべ
なるかな、とも思います。
おそらくは宮尾登美子じしんの持つ「女」「芸術家」そして気丈な「母」像
を色濃く反映して、関係者の迷惑顧みず(?)創造したひとつの「小説」な
のでしょう。
それにしても、面白い。
たとえば、東京国立博物館蔵の、幽霊を描いた大傑作「焔」という作品があり
ます。
これが、年下の恋人を失ったショックを振り切り、恨み辛みを反映して描かれ
た事、そして、描いたあと再び気力を失って、なにも描けなくなってしまった
事を、この小説は明かします。
あの空前絶後の怨念を放つ、お札を貼って鎮めたくなる迫力の東博のガラス
ケースの向こうの作品の記憶もあいまって、成る程、この位の本人の切迫感が
あって、はじめてあの作品が生みだされたのだ、と納得させられます。(私は
あの作品を見て松園が好きになりました。)
また、最初の師匠と関係を持って、後に裏切られ、その後も、私生児を産ん
だ負い目もあって、幸福とは言い難い男女関係に終始してしまいます。さら
に、画塾での男たちの嫉妬混じりのイケズな扱いの描写もなまなましく、わ
たしゃあ別にフェミニストじゃありませんが、やはりこの時代、女の扱いは
非道く軽い。その時代を乗り越えて大成した女流画家という事実の重さを知ら
されます。
松園作品の、あの女性の夢のように気品のある世界を描いた背景の酷薄さを
知ると、あの美しい作品世界が、哀しい切なさをたたえてきます。
一方で、その松園を守り抜いた母親の姿の大胆さ、強さも印象的で、さらに、
「生みだす」仕事をする者の絶対的な孤独の姿を知るにつけ、ますます松園
の描いた作品に興味を覚えてしまいます。
この小説で、イヤな思いをした関係者も多分多いのでしょうし、取材を背景
とするとはいえ、作り事の割合も多いのかもしれませんが、その「罪」を補っ
てあまりある、ひとりの芸術家の存在を称揚した「功」を認めなくっちゃしょ
うがないと思います。
だけど、やっぱり罪深い職業なのだろう、と思います。宮尾登美子という職
業は。
私には松園と宮尾という二人の罪深い芸術家がつばぜり合いをしているよう
に思えました。
・・・ちと長い感想文でした。ここで、弊社の松園作品をご紹介、という段
取りになると商売的には流れがスムーズですが、残念ながら、現在上村松園
の在庫はございません。お求めの方はご予算をお知らせ下さい。入手できま
したらお知らせ致します。ただ、本画は100万以下では手に入りません。リ
トグラフは、もちろん安く入手可能であります。
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さーて、新人・猪山の活躍で、やっとこさ、作品のHPへのアップロードが進
んでいます。本日も新入荷情報をお届けします。
■小山敬三『紅浅間』
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40ruhby0b8fv4nhw59
どちらかというと日本画の扱いの多い秋華洞ですが、仕入れ担当の田中自知郎
の琴線に触れると、ドンとこうした良質の洋画も扱います。小山敬三は長野県
小諸の出身、浅間山のテーマを好んで描きました。「紅」はやはり夕景という
ことでしょうか、背後に三日月を配し、大胆な筆致で、浅間山のド迫力を表現
しています。
ちなみに、ネットで拾った浅間山の写真です。
http://wadaphoto.jp/japan/oniosi1.htm
http://www6.ocn.ne.jp/~daichan/HP/asamayama2.htm
http://science.shinshu-u.ac.jp/~geol/Miyake/photo_ashcloud.html
画像を見ると、この浅間のエネルギーを、四角いキャンバスに封じ込めようと
苦闘して、ああいう絵肌ができあがってくるのだ、という事が実感できます。
今度山の実物も見に行ってみよう。
■武者小路実篤『かきつばた』『薔薇』
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rulby0b8fv4nhw59
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rumby0b8fv4nhw59
『友情』『或る人』『人間万歳』などの代表作で知られる文学者、武者小路実
篤の小品です。画家ではありませんので、ことさらうまい絵ではありませんが、
たいてい、ひとこと、人間味ある画賛が添えられ、心にポッと灯をともす作品
群を数多く残しました。
今回紹介した二作品には、いずれも「天に星 地に花 人に愛」とあります。
現代社会では幾分陳腐に思われる言葉かも知れませんが、目の前に置いて味わ
い、例えば毎日この言葉を胸に刻むことは、現代だろうが大正時代だろうが、
変わらぬ人生の真実のことば=ビタミンとして作用するのではないでしょうか。
参考リンク:武者小路実篤記念館
http://www.mushakoji.org/index.html
■川島睦郎『紅葉』
下保昭先生に師事した川島睦郎先生の作品です。四季折々の花や鳥たちを、そ
のお人柄の現われなのでしょうか、優しい筆遣いで描きます。
ちなみに弊社会長とはゴルフか何かでご一緒するのか、「むっちゃん、むっちゃ
ん」と呼ばれて親しまれている方だそうです。
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40ruoby0b8fv4nhw59
■根上富治『竹林の雀』
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rupby0b8fv4nhw59
大正から昭和にかけて活躍した根上富治。朝靄たなびく竹林に、雀の群れが遊
びます。価格的にもお求めやすい、可愛らしい作品です。
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はい。
と、いうことで、今日の特集、連載中・小室翠雲の紹介に行ってみたいと思い
ます。
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「熱血!小室翠雲」その4
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この方をとりあげるのは、実は、私が初めて扱った作品、という非常に個人的
な理由もあるのですが、そのほかに思うのは、この人のエピソードを調べると、
明治男の一本気な性格、その気質を育んだ、何事も不便かつ素朴な明治という
時代の良さがあらわれているということです。
たとえば同時代の夏目漱石や正岡子規の作品を調べていても思うのですが、登
場するどのニンゲンもどこか荒削りで時に喧嘩腰で、なんとなくふにゃけた時
代の日本に育った私としては好ましく思えるのです。
●●翠雲と足尾鉱毒事件
師・田崎草雲と死別した翠雲は、明治32年、33年、田中正造の足尾鉱毒事
件に巻き込まれます。
と、いうより、すすんで首を突っ込んだようです。その点、画室に籠もって画
業だけに没頭する「オタク」型でない、熱血行動派の翠雲の資質がうかがわれ
ます。
足利のとある家を事務所にして、自筆大著した「鉱毒救済會」の看板を掲げ、
被害を訴えるために鉱毒地の実態を絵にして宣伝用に使ったりします。
運動は燃えに燃え、寺の梵鐘で集まった数千の農民が大挙して東京の内務省に
陳情行動に出ます。
翠雲も馬に乗り(!)その列に加わります。
ところが、東京・芝で投宿していた翠雲を、警察が夜中豪雨の中を、拘引して
しまいます。
「凶徒召集罪だ」と決めつける芝署署長と大激論となり、結局、翠雲は内務省
にたどり着けない顛末となります。
参考リンク:ウィキペディア(Wikipedia)「足尾鉱毒事件」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%B3%E5%B0%BE%E9%8A%85%E5%B1%B1
●●南画受難の時代
さて、時代は重なりますが、翠雲は明治32年、25歳で上京します。
すべての若者がそうであるように、このときの翠雲は、格好良くはありません。
あるいは、金がありません。
何より、翠雲の学んだ「南画」が受難の時代です。そのころ、上野で、宗星石、
高森砕巌、川村雨谷らが「南画會」なる席画の会を開いていますが、画家が3
0名、お客が5名といった有様で、客は2,30枚タダで描いてもらえる。客
は「先生、笹っぱはいやですぜ」などと好きなことを言う。
そうしたなかで、翠雲は石版屋の版下の仕事などを引き受けてしのぎます。
●●芸者身請け
そのくせ、下谷(浅草)の花街の遊びは覚えてしまいます。亀子という芸者の、
「二百五十円の借金で三年の年季がある。お座敷の稼ぎだけでは抱え主が承知
しないから、厭なこともしなくてはならない」という言葉に同情し、それなら
俺が毎晩来てやる、と毎晩通います。
ところがそれを知った悪友が馬車で迎えに来て、それに乗っていつもの待合に
着くと、家の中がガタガタにぎやか、年増芸者が大勢来ている。何事かと二階
にあがると、丸髷を結った亀子がつれてこられて、「さあお祝いだ」。
なんと落籍の祝言が用意されていたのです。冗談かと思えば悪友が本当に話を
つけた由、なんとか亀子の居場所と小遣いを用意しますが、苦労した割には結
局亀子はふらりと「郵船のボーイ」なる男とくっつき、結婚する、という運び
になってしまいます。「郵船のボーイ」は当時の翠雲より金があったのです。
翠雲は渋々と工面して箪笥など買ってやり、亀子を送り出します。
この何ともおおざっぱな成り行きが、翠雲の性格なのか時代の空気なのかわか
りませんが、ユーモラスな青春には違いありません。
参考:小室翠雲作品紹介/おんらいんぎゃらりい秋華洞
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40rurby0b8fv4nhw59
(この稿、次回で最終回にしたいと思います。なお、内容の多くを村松梢風
「本朝画人伝」を参考にしています。また、翠雲研究者の読者様からも資料の
提供をいただきました。ありがとうございます。)
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校正を重ねたりして、現在、印刷屋さんに再清書してもらっております。本当
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弊社は平成15年に設立、平成16年に開店致しましたが、50年近く美術業界
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