2004-12-03日本美術そうだったのか通信
Vol.29 真贋について その4

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.29
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
http://aojc.co.jp/
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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お元気でしょうか。アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

ようやく「おんらいんぎゃらりい秋華洞」
http://www.syukado.jp/
のサイトもオープンにこぎつけまして、オンラインショップ、の形を一応整
えることが出来ました。日本美術の逸品をこれからもご提供していくと同時
に、長期クーリングオフなど、新しいサービスに取り組んでいきたいと考え
ております。今後ともよろしくお願いします。

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★ちょっとニュース★
ほぼ毎日発行と言うことで始めた本通信ですが、週一回の発行に改めさせて
頂きます。ご了承下さいませ。そのぶん、「おんらいんぎゃらりい」の方に
力を入れていきたいと思いますので、よろしくお願いします!
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ちょっと落ち着いたところで、「真贋について」シリーズの「その4」をお
届けしようと思います。

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■□■□真贋について その4
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その1
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004090618_2534027105318424.txt
その2
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004091611_2533028098387058.txt
その3
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004092117_2582028604326152.txt

真贋についての、原則的な考え方と、江戸時代以前の真贋判断の実際につい
て前回まで述べてきました。

今回は、明治期以降の美術品の真贋判断ルールや考え方について触れてみた
いと思います。

真贋については、究極のことを言ってしまえば「絶対」にはわからない、と
いう事を「真贋について1」で述べました。

まあニンゲンの「わからない」ということを極論すれば、「この世があるか
どうかわからない」「いるのは僕だけかもしれない」とか「この世はマジで
マトリックスかもしれない」など、究極の観念論にまでたどり着いてしまい
ますが、ただ、美術品に関して、その人が実際にその作品を「手がけた」か
どうか、といえるか、という事は、様々な傍証材料を通して、その人が「作っ
た」としか言いようがない、と<どこまで>言えるか、というオハナシでは
あります。あるいは事件捜査や裁判にも似ています。絶対に黒白は言えない
けれども、どこかで黒白をつけてしまわなければならない。

ただ、その「オハナシ」で、目の前の作品が1万になったり、1千万になった
りするとすれば、「オハナシ」では済まない世界ですね。真剣勝負の世界で
す。これも裁判と同じかも。

古いもの、たとえば平安時代や鎌倉時代のものは、傍証材料も極めて乏しい
訳ですから、「紀貫之」が書いたことになっている、としかいいようがない
ケースが多いわけで、「attributed to KinoTsurayuki」「紀貫之に擬せら
れている」「伝紀貫之」みたいなキャプションが作品の脇に添えられている
訳です。もう、「伝」としか言いようがない、というケースが古い時代のも
のほど多くなります。

どうにもこうにも他の人が書いた、とは言いようがない!というケースでは、
たとえば弘法大師(空海)の『聾瞽指帰』のようなものがあり、これは「伝」
とは書いていないはずです。(間違っていたらご免なさい)

いずれにしても、そういう事情で、江戸期以前のものは、そのオハナシの確
からしさを、プロの美術商が見て、真贋の白黒を判断しているわけです。要
素としては、箱、箱書き、表具、そして絵、落款、また権威ある画集への掲
載の有無、所有履歴などが材料となります。先回説明したとおり、「灰色」
的世界もあるのが特徴です。

たいていは一瞬で判断しますが(ここが美術商の強いられた酷薄な状況でも
あり無謀さとも自信とも言えます)、たまには時間を掛けることもあるでしょ
う。

その詳細はまた書くとして、今日は近代以降の話。

近代、つまり明治以降の作家の場合は、書画・茶道具とも、作品に「共箱」
を付すのが慣習になっています。

「共箱」とは、作者本人が、画題、署名、印などを作品を納める桐箱の蓋の
表裏(表だけの場合もあり)に書いたもので、この習慣をいつ、誰が始めた
のは定かではありませんが、少なくとも明治半ば以降の掛け軸の日本画作品
は必ずこういう形になっています。(江戸・明治の移行期には共箱ではない
作品もあります。明治初期の狩野派の作品など)

ちなみに、何故か岸駒(江戸後期)あたりは江戸期にもかかわらず、共箱が
あるようです。

さらに、戦後あたりから(多分)、生活様式の洋風化に伴い、日本画も「額
装」が多くなりますが、こうした作品には「共シール」という紙片が額の裏
に貼られるようになりました。この「共シール」にも、共箱と同様「作家名
・画題・印」が書かれるのが一般的です。

このシールの筆跡は、美術商ならまず見間違えることがありませんから、事
実上、この共シール、共箱がしっかりしていることは、近代以降の日本画・
工芸品が「本物」として流通するための大事な要素です。

無論、この「共箱」の贋物も存在しますし、万が一、箱の中身と箱が入れ替
えられていたら、という事もあるでほうから、絶対の安心、といいきれませ
ん。勿論、肝心の作品の方がダメなら話になりません。

そこで、と、いうべきか・・ところで、「鑑定証」というものがあります。

これは、何でしょう。次回は、この「鑑定証」とは何ものか、ということか
ら始めたいと思います。

(この稿、間違い(または偏見、凡ミス)等ありましたら是非ご指摘下さい)

今日の一枚
□ 平福百穂 『春山帰樵』
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作品は一点限りですので、ご用命はお早めにお願い致します。また、売り切
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本日は読んで下さいまして有難う御座います。
またお会いしましょう!

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