今回の展示では、岡本東子、柿沼宏樹、上根拓馬、村上仁美、ディー・チン、高資婷(こう つてい)、加納萌子の7名の作家がそれぞれ思い入れのある物語を取り上げています。
伝説の霊獣から、浦島太郎、番町皿屋敷、はたまたアンデルセンやグリム童話などをベースにそれぞれの作家が独自の表現を展開しています。
大人になった今、かつて親しんだ昔話はどのように表現されるのか、物語を思い浮かべながらご鑑賞ください。
殺害されたのではなく、自ら井戸に飛び込み死を選んだお菊。
皿屋敷伝説は全国に様々な派生がありますが、江戸版「番町皿屋敷」のお菊さんには強い意思を感じます。
周囲の毒念(悪意)によって命を落としたことには変わりありませんが、怨霊となったお菊自身も、毒念をもってその家に中指のない子が生まれるほどに祟るのです。でも十枚目のお皿があると聞くなり「嬉しや」とあっさり消えちゃうなんて可愛げもあって好きです。(岡本東子)
物語上の動物を立体作品にというコンセプトのもと制作したシリーズです。4大聖獣(鳳凰・龍・霊亀・麒麟)、中国においては瑞獣・四霊とも呼ばれる聖なる獣たちで、自然界や様々な概念の象徴として描かれています。鳳凰は天空を統べるものの象徴であり、優れた人物の出現とともに現れるとされる霊鳥です。様々な物語上における鳳凰の要素と現代的物質の要素を再構成し、立体作品にしました。(上根拓馬)
「眼をひらけば冥茫模糊、薄みどり色の奇妙な明るさで、そうしてどこにも影がなく、ただ茫々 たるものである。」 これは、太宰治の「浦島さん」の一文。助けた亀に連れられた浦島太郎が、海中で眼を開けた 時に映る世界です。これをきっかけに、物語は昔話からSFに転じた気がしました。1枚は、この情景を小さな画面に閉じ込めようと思いました。もう1枚は、SFの続き。彼が目に した変化、そして去年を境に現代の我々が直面している変化。そんな「今」と「昔々」を繋ぎました。(柿沼宏樹)
ノルウェー民話太陽の東月の西を題材に作りました。とはいえ、私に大きなインスピレーションを与えたのはカイ・ニールセンによる挿絵です。人物の背筋から伸び上がるような木の描写から、眼前に見える世界が自分の内から湧き起こってくるものによって作られているように感じたのです。件の場面は物語の中盤、主人公が自らの過ちを自覚して悲嘆に泣き暮れるところ。しかしその憂き目がなければ後に展開するハッピーエンドを掴み取ることもできなかったでしょう。悲しみを抱える人は強く立ち上がります。(村上仁美)
この作品は、「星の王子様」にインスパイアされたものです。
私が想像した「星の王子様」を描きました。
王子様はダイヤモンドがはめ込まれた金の王冠をかぶっていて、王冠の中には花が通っています。
キャラクターのイメージを重視したため、余分な部分を取り除いた非常にシンプルな作品になっています。
この個性的な王子様の姿を皆様に覚えていただければ幸いです。(ディー・チン)
この作品は、縁結びの赤い糸を持っている河童は、美人と繋がりたいという求愛行為を表しています。
伝統的な美の観念の中で描かれた美人と、余りに人間くさく戯画化される河童という組合は、「美人と野獣」系の画題に自身の人間観を見せたいと考えています。(高 資婷)
おやゆび姫をテーマに描きました。
醜いヒキガエルがおやゆび姫を息子の嫁にしようと連れ去る様子です。
大切に育てられてきたおやゆび姫が感じる外の世界での不安や恐れを表現しました。