2019-06-26日本美術そうだったのか通信
Vol.391 カタログ60号「夏」号発刊。必見!橋本雅邦《龍虎図》

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★★ 秋華洞カタログ60号「夏」ご案内中です ★★
https://www.syukado.jp/catalog/

定期購読頂いているお客様のお手元にそろそろ届いている頃だと
思いますが、お楽しみいただけておりますでしょうか。

◆◆まだカタログをご覧いただけていない皆様◆◆
もし、ご興味がございましたら、
お試しとして今回のカタログを無料でお届けいたしますので、
上記URLから、もしくは 03-3569-3620 まで、
お問い合わせください。

今号の表紙は橋本雅邦の作品《龍虎図》から。
劇的に描かれた虎の姿は、狩野派の伝統的な題材でありながら、
フェノロサから学んだ陰影法など西洋画法まで効果的に
取り入れられた雅邦の意欲作です。

表紙は「虎」を切り取ってお見せしていますので、龍の姿はありませんが、
本紙22~23ページの全体掲載ページを見ても、「どこに龍が??」と
お思いの方、そのお気持ち、よくよくわかります。
どうぞ、カタログをもう一度御覧くださいませ。
特に虎の視線の先、作品の最下辺を。
沸き立つ大気の流れの中に、ちらりと見え隠れする灰色の鱗。
この僅かな描写が「龍」、そして本作を《龍虎図》たらしめているのです。
実はスタッフも入荷直後は、もしやこれは双幅の片割れで、
龍の幅は行方不明なのでは…と疑っていたのですが…
『雅邦翁画集』(明治36年)に掲載されたときも一幅、
落款の位置から見ても、これは一幅で鑑賞するものでしょう。
それに、巧みな構図に気づいてしまえば、まずは観者の目を虎の
雄々しい姿にのみ注視させる、絶妙な表現に感服する他ありません。

ところで、「龍虎図」といえば、日本画では大変人気の画題ですから、
もちろん雅邦も幾度も描いています。
なかでも特に有名なものは、1971年に「政府印刷事業百年記念」として
発行された切手の図柄にもなった《龍虎図屏風》ではないでしょうか。

明治28年(1895)開催の第四回内国勧業博覧会に、
三菱財閥の二代目総帥、岩﨑彌之助の援助によって出品された
雅邦の代表作で、
現在も 岩﨑家ゆかりの静嘉堂文庫美術館に所蔵されています。
発表された当時は、水墨画の伝統を踏襲しつつも西洋風の遠近法や
表現方法に、鮮やかな色彩の斬新さに世間に受け入れられず、
「腰抜けの虎」などと揶揄され、賞も逃してしまったというこの屏風。
しかしながら、昭和30年(1955)には明治期の日本画革新の
記念碑的な作品として、近代絵画で初めての重要文化財に指定される
こととなるのです。

ちなみに、カタログ60号8~9ページに掲載されている川合玉堂は、
新聞記事でこの《龍虎図屏風》の写真を見て衝撃と感銘をうけ、
翌年東京に出て雅邦に師事することになります。

さらに余談ですが、カタログ60号6~7ページに掲載されている
西郷孤月は、東京美術学校(現:東京藝術大学)在学時代、
雅邦に見出され、横山大観、下村観山、菱田春草とともに
雅邦門下の四天王と呼ばれていました。
岡倉天心を媒酌人に、雅邦の四女と結婚もして将来を嘱望されて
いたのですが、酒の席で雅邦と衝突したのをきっかけの一つに、
放蕩に明け暮れるようになります。
また他の女性とも関係もあったとも言われ、その後離婚。
放浪生活のはてに、作家としての再起の兆しが見え始めた大正元年
(1912年)39歳、20年ほどの短い画業でこの世を去ることとなります。

穏和で堅実な人柄で知られ、多くの画家の指導に尽力した雅邦ですから、
その分作家達との交流は多く、エピソードは付きませんね。

さて、本カタログの《龍虎図》に見られる、少ない描線で事物を捉えて
画中に描き出す表現方法は、明治20年台の鑑画会時代の雅邦の特徴です。
そこから、この作品は、《龍虎図屏風》 に先立って描かれたものと
思われます。
肩、腰、後ろ足へと続く独特な波打つ動的な骨格と、筋肉の弾力が
強調された劇的な描画は、両作の虎に共通する表現と言えるでしょう。

幼少から狩野派を学び、12歳にして狩野養信に入門し、
その後は狩野雅信を師として、23歳で画塾の筆頭となった雅邦。
狩野勝玉、木村立嶽、狩野芳崖と共に勝川院門下の四天王と称され、
特に同時期に門下となり生涯良きライバルであり親友であった狩野芳崖とは、
その才能を称して「勝川院のニ神足」「勝川院の龍虎」とまで
呼ばれていました。

自身までその類まれな画才を龍虎にたとえられた雅邦。
画題としても思い入れも一方ならぬものがあったことでしょう。
その近代日本画の父たる雅邦の圧巻の一作。
ご堪能くださいませ。

追記※掲載1ページ目もネコ科つながりで大変かわいらしい

榊原紫峰の《猫》です。猫好き様、こちらもご必見!

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