作品解説
若き東京時代の一幅。当時一村は呉昌碩や趙之謙など、清朝末の上海派書画に傾倒していた。奔放闊達な濃墨の梅枝と、水気を含んだ筆線がうねる奇石が対照をなす本作。中国文人画に学んだ没骨法を発揮しつつ、粘り強さのある筆勢に独自の個性が窺える。花蕊には黄を、枝には影のように淡い朱を引き、冴えた色彩が際立つ。元旦揮毫の画に相応しく、どこまでも伸びゆく生気に溢れている。
【読み】
危𠅘勢揖人
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田中 一村(たなか いっそん )
明治41(1908)栃木~昭和52(1977) 日本画家。10代ですでに趙之謙や呉昌碩風の南画を自在に描き、米邨の名で活躍した。東京美術学校(現:東京芸術大学)日本画科に入学するが2ヶ月で退学。第19回青龍社展に入選し、初めて一村と名乗る。西日本へのスケッチ旅行が転機となり、奄美へ移住。後は中央画壇に席を置かず、生涯に渡って南洋の動植物を独特の色彩で描き続ける。没後メディアの紹介により、一躍注目を浴びる。