作品解説
1969年五都展において、正義はこれまでの原色を多用した絵画様式を覆す清爽透明な写実作品《雪景色》を出展し、画壇からの評価を一転させた。そして、その成功をもとに開催された個展「太陽と月のシリーズ展」において、鮮烈にして透徹した独自の革新的風景画を確立させたのである。沸き立つ雲を背に描かれた山々の青いシルエットと山の端を温かく染める陽光。神秘的な冷たさと明るさの対比が技法を超え、画家の心象さえ訴えかける本作もまた、この反骨の画家が掲げた転機の作。正義曰く、「ネオ・リアリズム」の一枚である。
中村 正義(なかむら まさよし )
大正13(1924)愛知~昭和52(1977)神奈川 日本画家。中村岳陵に師事。第6回日展に出品、特選となる。36歳の若さで新日展の審査員となるが翌年日展を脱退。その後無所属で活動し、映画や演劇など多方面で活躍。从会結成。東京展市民会議を創設。日本画というジャンルにこだわらず、独自の画風を発表し続けた。