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06 ”目利き”という仕事の伝承
私は父という人がどういう人なのか、よくわかっていませんでした。
祖父が始めた古書画の通信販売という仕事、ふーん。
・・・いったい、父とは誰なのか。
「千秋君に仕事を教えるのは、お父さんにとっては、とても嬉しいことの筈だよ。」と高橋先生の助言もありました。
美術。絵画。書。
実は、私が食べさせ着せてもらっていたのは、そうしたものを販売する仕事を通してでありました。
さらにそれらは、私が憧れてやまなかった映画の「熱」というものと、遠い地続きで繋がっている筈。手あかの付いた言葉ではありますが、「文化」を担う仕事として、自分の資質や情熱を傾けるに足る仕事かもしれない。
そして、「目利き」である父(どうやらこの世界では)の、世界を受け継いでみる。
このことは父の代で止まっていたであろう「知識」や「経験」を、自分の代に受け継ぎ、発展させることでもある。
そして、あらためて「父」を発見する事でもある。
しばらくの間「断絶」していた親子が、ひとつになって頑張ることはもしかしたら本当の「幸福」なのかもしれない。
そんな(私にとっての。父はまた違う動機でしょうが)きっかけで、私はこの会社「アートオフィスJC(自知郎・千秋の略&日本文化の英語頭文字)」を始めることにしたのです。
※古書画の通信販売:祖父が創業し、父の兄弟が受け継いだ古書・美術の販売会社「思文閣」を指す。京都を本社とする。