□■□■ 「日本美術そうだったのか通信」 Vol.104
発行 株式会社 秋華洞
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日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、
美術業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
秋華洞提供。
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もくじ
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・ごあいさつ
・カタログ冬号まもなく
・須田剋太展開催中
・特集:荒井寛方〔前編〕
・秋華洞 新入荷作品
・冬カタログのチラリ
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いつも「そうだったのか通信」をご覧いただいている皆様、こんにちは。
また、初めてお目にかかる方、はじめまして。秋華洞の芹澤直子です。
ついに今年最後の月になりましたね。時の流れの速さと、冬の寒さを
ひしひし感じる今日この頃…、お風邪などお召しではございませんか?
さて、当メルマガの作家特集。前回(102号)は斉藤真一先生を採り上
げさせていただきました。今回は、荒井寛方先生についてのお話しを、
前・後編に渡ってお届けする予定です。
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■□■カタログ『秋華洞 Vol.7 2006冬号』まもなく発送開始■□■
https://www.syukado.jp/jp/support/catalog/index.cgi
お待たせしておりますカタログの最新号は、全ての編集を終え、ただいま印
刷に入っております。秋華洞史上初・120点以上の作品が収められた超大作
です。スタッフ一丸となって編集作業に取り組んできました。どうぞご期待
の上、今しばらくお待ちくださいませ
今回のカタログ、一番の特徴は、『浮世絵』『版画』のジャンルが入ってき
た事でしょう。
豊国、芳年、国芳、広重、英泉、歌麿などの浮世絵版画。
小林清親、川瀬巴水、吉田博、伊東深水などの近代版画などもカタログ後半
で採り上げております。
浮世絵の表現を見て思うのは、現代のグラフィックデザインや、漫画表現に
ほぼダイレクトに通じるデザイン性です。
肉筆とは違う次元での自由さやケレン味は、今見ても全く新鮮で、日本より
もむしろ欧米で好まれて蒐集されているのもうなずけるものです。「豊国」
など、単価の安いものもありますので、美術蒐集の入門編としても楽しめる
のではないでしょうか。(美人画収集で有名な福富太郎さんも最初は浮世絵
から入ったようです。)
さて、巻頭特集、日本美術そうだったのか通信では、「アートソムリエ」山
本冬彦様にご登場願います。山本様は、ご自身もある保険会社にお勤めの美
術コレクターですが、日本では何故か馴染みの薄い「アートを買う」という
行動をもっと一般化させようという運動を展開されています。
「絵を買う」案内人、すなわち「アートソムリエ」。その辛口の提言(美術
関係者にとって)をお楽しみ頂き、さらに美術の世界を楽しんでいただく端
緒になれば幸いです。
ご予約はこちらです!完成次第、順次お送りしますので、ご希望の方は請求
フォームにて お気軽にお申し込みくださいませ。
美術カタログ誌「秋華洞 Vol.7 2006冬号」のお申し込み
https://www.syukado.jp/jp/support/catalog/index.cgi
(ご請求は、お電話、ファックス、メールでも承ります。
メールマガジン下部に記載の連絡先をご参照ください)
※なお、以前(Vol.1〜Vol.6)ご請求いただいた方には次号も自動的にお送
りしますので、再度お申し込みの必要はありません。過去ご請求いただいた
ことのある方は、 請求部数のご変更等、必要に応じてお使いください。
■□■生誕100年記念・須田剋太展開催中■□■
http://www.syukado.jp/jp/gallery/
今、銀座六丁目・電通通りの当廊「ぎゃらりい秋華洞」では「須田剋太」の
展覧会を開催中です。
絵の虫。
子供のように、狂ったように、絵に熱中した最後の画家。
土臭い中から生まれ出た絵の化身。
須田剋太の作品には、芸術に対して常に無垢であることを強いた意志の強さと
その無垢ゆえの、エネルギーの爆発が感じられます。
今年はその剋太がうまれてから100年目。
当店所蔵のなかから10点ほどを選んで展示しております。1月20日まで開
催中。是非お越し下さい。
『生誕100年記念・須田剋太展』
平成18年12月4日〜平成19年1月20日 10:00−19:00
ただし、日曜祝日と12月30日〜1月4日は休廊致します。
http://www.syukado.jp/jp/gallery/
■□■特集:荒井寛方〔前編〕■□■
荒井寛方。あらい・かんぽう、あるいは、あらい・ひろかた。美術ファンで
あれば誰でも知っている著名な作家というより、ちょっと渋め、知る人ぞ
知る存在かもしれません。
簡単なプロフィールをご紹介します。
「1878(明治11)年・栃木、荒井素雲の長男として誕生。本名寛十郎。
水野年方の下で歴史画を学び、明治35年國華社に入社。その後、
十年間仏画模写の仕事に従事。大正5年インドに渡り、現地の美術
学校で教鞭をとる傍ら、アジャンターの壁画などを模写。帰国後は、
仏教に画題を多く得た作品を院展を中心に発表。
昭和15年より法隆寺金堂の壁画模写に着手するも、病(脳溢血)に
倒れ、1945(昭和20)年に急逝。享年68歳。」
寛方は、武者絵や花鳥画等も手がけていますが、やはり彼の作品で
最も有名なのは「仏画」でしょう。前回の特集でご紹介した斉藤真一の
代名詞が瞽女(ごぜ)であるように、寛方といえば仏画なのであります。
彼が「仏」を画題にとるようになったきっかけは何だったのでしょう。
と、その背景について知る前に、〔寛方の画家への道〕を少し遡って
みましょうか。
寛方の画家人生に語るには、まず父である荒井素雲(本名藤吉)に
ついてお話しする必要があるかもしれません。素雲は元々、幟(のぼり)
や提灯に紋所・紋章を描く「上絵師」を生業にしていました。
ところがその素雲、家業の上絵師の職に就きながら、実はその仕事に
満足することなく、いつか南画家として世に立ちたい、という夢をずっと
持ち続けていたといいます。
ちなみに南画とは、中国の南宗時代の絵画「南宗画」の影響を受け江戸時
代中期以降に成立した様式のこと。中国絵画の模倣から始まり、与謝蕪村、
池大雅などによって日本独自のやわらかさやユーモアを持った様式に発展し
ました。
参考)おんらいんぎゃらりい秋華洞 用語集「南画・文人画」
http://www.syukado.jp/jp/support/glossary/index.html
徳川五代将軍 綱吉の時代に伝えられたとされる南画。その特徴は、
職業画家の形式的な描き方よりも、素人ならではの伸びやかさや「主観
」を重んじるところにありました。当時狩野派による因襲的な作品に
飽き飽きしていた画家達が、そんな南画に新鮮さを覚えたのも当然の
流れかもしれません。南画の最隆盛期は幕末ですが、明治に至っても
なお余勢は続き、寛方の父である素雲も、その時流に乗り、共鳴した
ひとりでありました。
明治23年、日本美術協会展に出品した素雲の『楊柳観音図』が一等
褒状に選ばれ、その3年後、彼は故郷を後にし上京する道を選びます。
齢、34歳。上野の牛鍋屋の二階を借りて薬屋を開業し、行商で生計を
立てながらの画業のはじまりです。
師には当時の東京の南画家の第一人者、滝和亭。和亭(かてい、と
呼びます)は、長崎の三大南画家のひとり日高(祖門) 鉄翁や大岡
雲峰に学び、品位ある作風と絢爛豪華な花鳥画で知られる画家で、
師としては申し分ない相手でした。
しかし。
偉大な師の教えを受けながらも、素雲の道のりは平坦ではありません
でした。数年の月日が流れてもなお、素雲が南画家として独立する
目途は立ちません。
やがて妻子を養うことすら出来なくなっていき、そのうえ眼病にまで侵され
た素雲は、和亭の忠告もあって、南画家としての志しを断念するに至ります。
滝和亭の忠告は、事実上の戦力外通知でありました。それを聞いた時の素雲
の無念さ、悔しさは、想像に難くありません。泣く泣く郷里に引き揚げる素
雲。せめてもの救いは、長男で、後の荒井寛方となる寛十郎が、自分の志し
を継いでくれたことでした。
また、和亭は、寛十郎(寛方)の意思と資質を認め、風俗画の大家である水
野年方の門に入れてやりますが、その計らいは、素雲不憫さも手伝ってのこ
とだったかもしれません。
父の夢だった、画家としての生。
画業への思いをその身に託された寛十郎は、師匠となった年方に「寛方」と
いう号を授けられ、本格的な画家の道を目指します。時に寛方、21歳のこと
でした。
(後編に続きます)
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〜おんらいんぎゃらりい秋華洞 新入荷作品のご案内〜
浜口陽三『緑の毛糸』/メゾティント・額装
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/yo_b/HAMAGUCI_YOZOU/A06-1247.html
岡文濤『雪中鴛鴦(せっちゅうえんおう)』/絹本着色・軸装
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/jp_b/OKA_BUNTO/A06-1288.html
須田剋太『東大寺椿』/紙・グワッシュ・額装
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/yo_b/SUDA_KOKUTA/A06-1388.html
須田剋太『芙蓉花』/キャンバス・油彩・額装
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/yo_b/SUDA_KOKUTA/A06-1385.html
斎藤真一『雷・越後瞽女夏の旅』/板・油彩・額装
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/yo_b/SAITO_SHINICHI/A06-1375.html
作品は一点限りです。お問い合わせ・ご用命はお早めにお願い致します。
なお、品切れの際はご容赦くださいませ。
作品は、東京・銀座六丁目、電通通り沿いの、弊社秋華洞画廊で御覧に
なれます。また、スタッフ出張により御覧いただくことも出来ますのでご遠慮
なくお申し付け下さい。
<弊社開廊時間>
平日、土曜 10:00-18:00
日曜休廊
http://aojc.co.jp/corp/index.html#map
■□■
ここで、メルマガ「そうだったのか通信」をご覧の方に、予告と言いますか、
ちょっとだけネタバレ…。カタログ収載予定作品を、ちらっとご紹介します。
まず、秋華洞ではすっかりおなじみ、松林桂月の『寒林晩眺』や『秋林
帰樵』、伊東深水『新造千代春』や『富美花』、初登場の大橋翠石『子猫』、
同じく初お目見えの英一蝶の掛け軸『蛤貝淺妻船図 自画賛』などなど…。
池田輝方の作品もお目見え。
洋画では、前回の作家特集でご紹介し、実店舗でも入荷即売約済みと
なってしまうほど人気の斉藤真一の作品や、こんもりと盛られた絵の具が
特徴的な中川一政の『薔薇』を筆頭に、個性的な面々がずらり。同じく
当廊人気の須田剋太の作品も10点ほど掲載しています。
目新しいところでは、喜多川歌麿の木版画『画本蟲えらみ』(和とじ本)。
必見の一作です!一般には美人画で有名ですが、南方熊楠のような博物学
的な素養さえ伺わせる、虫と草をきわめて丹念に描いたこの豪華本は、歌麿
の代表作とされるものです。木版多色刷りの上に、蝶々の鱗粉の表現に雲母
(うんも)を塗り込んだ「雲英刷り(きらずり)」という手法が用いられて
います。
ところで、作品のそばに添えられている作家の略歴。これを見ていると、
同じ名前を、複数の画家の略歴部分で見かけることに、お気づきの方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、それぞれの関係を「師」(教える)「弟」(習う)で端的に表して
みますとこうなります、ということで、以下に例を挙げてみます。
師(教) − 弟(習)
鏑木清方−伊東深水
鏑木清方−水野年方
水野年方−池田輝方
水野年方−荒井寛方
記号と文章で表してみると、こういう具合です。
「池田輝方」はその後【川合玉堂】に師事、
その「川合玉堂」は【橋本雅邦】に師事
【雅邦】は日本美術院を設立し、
「菱田春草」「横山大観」「下村観山」等の
大家を育てたことでも有名。
ほかにも、
「伊東深水」→〔結城素明〕→【鏑木清方】
(深水を清方に紹介したのが結城素明)、
「結城素明」自身は【川端玉章】に師事、
という関係や、
・素明と共に无声会を結成した同志の〔平福百穂〕の父は【平福穂庵】、
・「大橋翠石」は〔渡辺崋山〕の次男【渡辺小華】に師事して南画を学び、
・「中川一政」は〔小杉放庵〕発足の老荘会に加わり…
等々、挙げればキリがありませんが、カタログをご覧になる際、作品だけ
でなく、それぞれの作家に関わった人物や相関関係に目を向けてみる
のも、新たなドラマが発見する喜びが感じられて面白いかもしれません。
■□■
ひつこいようですが、カタログご希望の方はこちらの請求フォームにてお申
し込みくださいませ。
https://www.syukado.jp/jp/support/catalog/index.cgi
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それでは、最後までお読みいただき有り難うございました。
次号もどうぞよろしくお願いします!
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よる絵画・書蹟、時代屏風、絵巻、古文書、古写本、古版本、稀覯本(きこ
うぼん)を専門とし、その他、彫刻、工芸品、茶道具など、多岐にわたって
対応致します。
弊社は50年にわたり日本美術商として活躍した代表・田中自知郎が長男・
田中千秋と共に、平成15年に「有限会社アートオフィスJC」として設立され、
その後平成18年に「株式会社秋華洞」と商号変更致しました。
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