□■□■ 「日本美術そうだったのか通信」 Vol.35
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
http://aojc.co.jp/ アートオフィスJC
http://www.syukado.jp/ おんらいんぎゃらりい秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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さて、時の経つのは早いもの、もう二月になりましたね。
本格的に冷えて参りましたが、お風邪など召されていませんか?
アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。
私はしっかり、ひきました。毎朝マスクで通勤しております。
まずはちょっとお知らせ。
ただいま、私はいわゆるブログ(日記のようなもの)を、綴っております。
このメルマガは週一でお届けしておりますが、ブログは案外頻繁に更新し
ておりますし、割合、率直に日々の思いを述べておりますので、私どもの会
社のヨコガオを知って頂くには最適、のものではないかと思っております。
他人の日記をのぞき見る趣味はない、と言われてしまえばそれまでであり
ますが、ナゾが多い、というイメージの「美術商」という仕事の中身がなん
となくつかめて、それなりに面白いのではないか、と自負しております。
よろしければどうぞ。
秋華洞丁稚ログ
http://blog.livedoor.jp/syukado
☆☆★☆☆★☆
私は、みなさんに、ちょっとお勧めしてみたいことがあります。
それは、会社を作ってしまうことです。
あなた「え、会社??」
はい、会社です。
創業から一年を経てしみじみ思うのですが、会社、なるものを作らなかった
ら経験できない事を色々経験できたし、これからも経験するだろう、と思い
ます。
資金繰りを心配したり、人事で悩んだり、広告の文言をない頭をひねって考
えたり、と、まあ色々面倒な事が多いですが、それでも、自分で、すべてや
らなければならない、という状況はなかなかに面白いものです。
何より、自由です。
大きな会社の中に、私は派遣エンジニアとして、いたことがありますが、大
企業の中には、首をかしげるような慣習が残っている所があったものです。
誰も決して発言しない意図不明なミーティングや、誰も実行しない体操の時
間など。。。ヘンだな、と思っても、「そういうことになっている」。大き
くて古い組織では、そういう不合理に知らず慣れてしまう、あるいは、不自
由をそうと感じなくなる、人間の感性の危機、というものが発生しやすいの
ではないでしょうか。
自分の創意工夫で如何様にもデザインできる、組織、あるいは人生、それは
何ものにも代え難い気がします。
ただし、ひきかえに多分引き受けなければならないのは、「不安」です。
多分、経営者はみな、「不安」なのではないでしょうか。あのビル・ゲイツ
でも、負け犬になるのではないか、と常に不安であるそうです。その
不安に打ち勝つために、新しいアイデアを次々に打ち出す、と。
(ただし私の記憶に頼っていますので、正確な表現ではありません。)
私も、不安です。美術商の専門職として覚えなければならないことが、まだ
まだ数パーセントも覚えられていませんし、お客様がある日突然こなくなるかも
しれない、といつも恐怖に震えています。
でも、面白さ、と、不安、というのは、セットになっているような、気がす
るのです。
会社をいきなり作らなくても、小さな会社に、ポコッと入ってしまうのも、
面白いかもしれません。専門分化されていない会社なら、いろいろトライで
きる筈です。
ま、そういう私のこの会社も、いつ、どうなるか、わかりませんので、もし
路頭に迷うようなことが有れば、貴方の会社で雇って下さいね。IT事業部
か、総務部美術担当?なら、お役に立ちますよ!(縁起でもない)
——————————————————(商品のご紹介)
平山郁夫『砂漠とらくだ』
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/jpn/A04-0159.html
平山先生は、現在日本橋三越を皮切りに、京都をテーマにした「平成の洛中
洛外 平山郁夫展」が各地を巡回しています。
http://allabout.co.jp/entertainment/japanesepaint/closeup/CU20011129E/
(以下敬称略)
平山は、一貫して、平和、そして仏教伝来をテーマにしてきました。シルクロー
ドから、日本の古都まで、仏教の足跡を追って題材としてきました。
広島での鮮烈な原爆体験を持つ平山は、たとえば丸木位里・俊のように、直
接的に、原爆の被害をテーマにすることはあまり有りませんでした。
彼にとって、直截ふれるのにはあまりにも重い経験でありました。
むしろ、多くの人々に安らぎをもたらした<仏教>が、困難を乗り越えて伝わっ
た道のりを辿ることに、画業の原点を見いだすのです。
現在巡回中の展覧会は、その仏教の「終着点」である京都をテーマにしてい
ますが、今日ご紹介する作品は、その伝来の道のりをイメージしたものです。
『砂漠とらくだ』
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/jpn/A04-0159.html
直径20cm円窓に描かれた平山のシルクロードシリーズの小品です。目下の私
どもの目玉商品です。本画の平山を一点、持ってみたい、という時に、手頃
な作品です。(といってもベンツSクラス位の値段ではあります。)
http://www.mercedes-benz.co.jp/showroom/passenger/s_class/index.html
(※メルセデス・ベンツサイト)
ただし現在貸し出し中ですので、画廊展示はしておりません。
平山郁夫『砂漠とらくだ』
紙本着色・ 額装
直径20cm 額43x43 cm
落款・印・共箱
講談社「平山郁夫全集Vol.5 シルクロード1」No.59所載。
昭和62年作品。
「平成の洛中洛外 平山郁夫展」
※東京の展示は先月で終了しています。
京都展 2005年2月3日〜15日 大丸ミュージアム
広島展 2005年2月24日〜3月9日 福屋催事場
岡山展 2005年3月11日〜21日 天満屋催事場
名古屋展 2005年3月26日〜4月12日 松坂屋美術館
瀬戸田展 2005年4月14日〜5月8日 平山郁夫美術館
福井展 2005年5月14日〜6月12日 福井市美術館
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さて、今日の本題。
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「熱血!小室翠雲」その2
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いささか忘れられてしまった、偉大な南画家、小室翠雲とは、どんな人物な
のか。
の続きです。
最初に、発表致します。
前回のメルマガで統計を取った、
小室翠雲を、
知っている方。
19クリック。
知らない方。
24クリック。
と、いう結果でした。
クリック数が、必ずしも、正確な人数ではありませんが、仮に、これが「人
数」だと致しますと、本メールマガジンの読者はなんと45%の方が小室翠雲
をご存じ、という事になります。
おそらく同じ調査を「Yahoo!」であるとか「マクロミル(調査会社)」
でやれば1%位になると思うので、「日本美術そうだったのか通信」読者は、
なかなかの通、と言っていいのではないでしょうか。
さて、小室翠雲というと、私の場合、オーソドックスな山水画のイメージが
強いのですが、彼が中心となった南画展などでは、堂々たる名品が出ている
と言うことで、たとえば群馬県立近代美術館には次のような大作が所蔵され
ています。
http://www.mmag.gsn.ed.jp/collection/honken/komuro.htm
その他、私の父が扱ったと自慢にしている、四尺(横120cm)の鳥が飛翔す
る名品も、この地域に(あるいは同美術館に)あるらしいのですが、確認し
ていません。
さて、何故、ここで、小室翠雲を取り上げたのか。
絵は今日の基準で言えば、万人に受けるものではありませんが、それでも、
画賛(詩)の入った山水図は、さりげないけれども、掛けると、独特の安っぽく
ないやさしい気品のようなものが漂ってきます。
しかし、絵のよさだけで、取り上げたのではありません。
村松梢風「本朝画人傳」の第六巻、小室翠雲の章を読むと、このひとの、天
真爛漫とも言える絵への情熱と、ときにはそこいらのものをひっくり返す、
明治男の頑固、熱血な画人の魂が伝わってきます。
それはときには可笑しくて、痛快なのです。
たとえばこういう事です。
貞次郎(翠雲の本名)は、12才の時、15キロほど離れた隣町の足利に住む田崎
早雲に弟子入させてくれ、と父に頼みますが、ちょいとした身分であった父
親は相手にしません。
そこで貞次郎は一計を案じます。
蔵に筆・硯と餅を持ち込んで籠城します。
「絵を描くことを許してくれるまで蔵から出ない」
腹が減ると餅を焼き、おとなしくしていては効果がないと、そこいらの手斧
で手当たり次第に柱へ切りつけます。(過激)
母「貞次郎、お父さんに話してきっと絵を描かせるから、乱暴はお止め」
貞次郎「本当ですか」
母「本当だとも、お母さんが引き受けてお父さんに頼んであげよう」
柔術家の弟子でもある父は、おそるおそる出てきた貞二郎の襟がみをとって
いきなり叩きつけます。
「親を脅迫するとは、怪しからん奴だ。」
貞次郎の願いは一顧だにされません。
しかし、貞次郎は執念深い。
次は16才の春。
今度は家出を企てます。
つてを辿って、70才の早雲の元まで、自ら尋ねていきます。即座に入門を許
された貞二郎は、叔父さんに頼んで、父親に許しを請います。
「それほど絵が描きたいなら今度は絵を描かせる。しかし、黙って家を出る
とは不都合であるから、一旦帰ってこい。その上で許してやる。」
父の伝言を真に受けて帰った翠雲は、またもや襟がみをつかまれ、座敷から
泉水の縁へたたきつけられます。
驚いた貞二郎は垣根へ上り、槙の木をよじ登って逃げます。
知人のもとで2,3日過ごし、そんなこんなでやっと貞次郎は父に絵の修行
を認めてもらうのです。
☆★★☆☆
翠雲の親父さんの問答無用ぶりが凄いのですが、翠雲は翠雲でそれに十分対抗で
きるぐらいに執念深く、真剣で滑稽で私は思わず笑ってしまいました。
ここで私にとってなぜか思い出されるのが、ビートたけしの書いた「たけしくん、
ハイ!」(あるいは菊次郎の夏)です。
双方の父親とも、理不尽で、横暴だったりするのですが、それに立ち向かう息子
たちも十分たくましく、そして、なおにじみ出る家族の愛情のほほえましさが、
何かニンゲン性がむきだしになっている時代の(明治と昭和の違いはあれ)幸福
を感じさせる点で重なるのであります。
この項、続きます。
☆★★☆★
本日は、最後までお読み頂いて有り難うございました。
また来週!
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