2019-10-16日本美術そうだったのか通信
Vol.393 牧野邦夫がすごいぞ!カタログ61号好評発刊中

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日本美術のホットニュース、業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報を
お届けします。株式会社秋華洞提供。
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★★ 秋華洞カタログ61号「秋」ご案内中です ★★
https://www.syukado.jp/catalog/

定期購読頂いているお客様のお手元に届いているかとは思いますが
お楽しみいただけておりますでしょうか。

◆◆まだカタログをご覧いただけていない皆様◆◆
もし、ご興味がございましたら、
お試しとして今回のカタログを無料でお届けいたしますので、
上記URLから、もしくは 03-3569-3620 まで、
お問い合わせください。

最新号の表紙は近年大人気の河鍋暁斎の《素戔嗚命の九頭龍退治》
画鬼と呼ばれた天才画家の、その冴え渡る筆さばきと類まれな創造性が描きだす、
厳かにして荒々しい神話舞台の一幕を是非ご堪能ください。

この作品については次号のメルマガでもご案内いたします。

また、11月8日(金)から17日(日)まで、弊ギャラリーにて
河鍋暁斎作品と暁斎をオマージュした現代作家作品を展示する
『We Love 暁斎』が始まります。

《素戔嗚命の九頭龍退治》ももちろん展示する予定です。
貴重な肉筆画を美術館よりも間近で見られる貴重なひととき。
ぜひご来廊くださいませ。

※作品は展示販売いたします。事前のお問い合わせも受け付けております!

詳細はこちらからどうぞ。↓↓↓
https://www.syukado.jp/exhibition/we_love_kyosai/

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さて、最新カタログの見どころに戻りまして、
今号はなんと行っても、圧倒的な描写力でリアリズムを追求し続けた異色の画家、
牧野邦夫の凄みを帯びた三作品が圧巻の見応えです。

牧野邦夫は大正14年((1925~1986)に渋谷に生まれ、早くに父母を亡くし、
母代わりの姉たちに育てられながら小田原で幼少期を過ごします。
この姉たちをモデルとした作品は多く、洋裁学校を経営した
長女の死の頃まで繰り返し描かれており、牧野の深い敬愛の情が伺えます。
ちなみに、従兄は幻想小説家で若くして悲劇的な死を遂げた牧野信一。
信一は牧野に「芸術家だけにはなるな、君は一高、東大へ行け」と
諭されていたといいます。

しかしながら、牧野の画家への思い止はまず、17歳で川端画学校を経て、
東京美術学校(現:東京芸術大学)油画科に入学し、伊原宇三郎、
安井曾太郎に師事し、画家の道を歩みはじめます。

終始レンブラントを師と仰ぎ、濃密な人物画を卓越した描画技術で
描いてた牧野ですが、戦後の美術界の激動期に前衛的な運動に流されることなく、
また美術団体に所属せず、ギャラリーでの発表が中心の活動であったため、
確かな実力とは裏腹に生前の知名度はそれほど高く有りませんでした。
かえって死後、テレビ番組や個展で知られるようになり、
また近年、その高度な写実的描写力が再評価され、
改めて企画展が催されるなど注目が集まっています。

最新号に掲載するのはそんな牧野が描いた、レンブラントと北方ルネサンス
絵画への憧憬が感じられる《セーターの自画像》、
観者を射抜くようにこちらを見つめる印象的な裸婦《モデル》、
写実と幻想を自在に行き来する《パイプ持つ男》。

この三作品はそれぞれ牧野を語る上で欠くことのできない
「自画像」「ヌード」そして「幻想性」の主題を帯びています。

牧野邦夫の絵を前にすると、かつて、SF作家アーサー・C・クラークが定義した
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」
という言葉を思い出します。その言葉の真意は違うかもしれませんが。
牧野の圧倒的な写実の画力で生み出されたリアリズムは、もはや非現実と
見分けがつかず、現実と幻想の垣根をたやすく飛び超えては、自在に行き来し、
思考を低徊は振り子のごとく私達を酩酊させては、あるいは打ち据え、
絵画の前に跪かせるような強烈さを放っています。

さて、牧野邦夫作品のなかでもっとも描かれている画題は
自画像ではないでしょうか。
現在確認できるだけで80点もの自画像を残しています。
牧野といえば、練馬区立美術館「牧野邦夫-写実の精髄」展の
アイコンともなった《ビー玉の自画像》を思い出す方も多いかと思われます。

さらに、《画家R氏の肖像》というタイトルの作品があります。
「R氏」というのは「レンブラント(Rembrandt)」のこと。
レンブラントへの敬愛と挑戦とを感じさせるタイトルがつけられたこの作品。
しかしながら、描かれているのは自画像です。

邦夫はギャラリーでの個展を終えると引っ越し、新たな住居でまず自画像を
描いたといいます。「引越しは自らへの1つの挑戦だ」と語る彼にとっては、
自画像を描くこともまたひとつの飽くなき挑戦であったのでしょう

カタログには暗色のセータを着た牧野が、中世絵画の如きポージングで
こちらを見据える挑発的とも言える自画像を掲載しております。
画家たちの歴史と牧野の魂が塗り込められた作品を
どうぞじっくりお楽しみくださいませ。

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